海の城 空の扉
――うん、いいよ。これでラドリーンのお願い、二つ叶えたね

ラドリーンは頷いた。が、最初の願いが何だったかどうしても分からない。

アスタリスは瓶の蓋を開け、匂いを嗅いだ。

「どれくらい混ぜているか分かるか?」

マスタフが尋ねた。

「リナムの体の大きさに合わせているだろうからな。大人で三匙(さじ)、子供で一匙といったところが適正量だろう。あそこに立っている全員には回る」

アスタリスはそう言ってから、アルフレッド卿を見た。

「他にも小屋には人がいるのであろう? 人数は分かるか?」

「年寄りと、女子供がいると思いますが、正確な数は分かりません」

「行ってみるか」

「バード?」

ラドリーンはアスタリスの腕を掴んで見上げた。

「案ずるな。俺は人間の病にはかからぬ」

「でも……」

「お前は少し休め」

アスタリスが何か呟くと、肩のあたりが赤く光った。
光は少し大きめなトカゲの姿に変わり、アスタリスの腕からラドリーンの腕を伝って肩によじ登った。

「俺が帰るまで、そいつがお前を守ってくれる」

――オイラだって、ラドリーンの護衛くらいできるのに

リナムが不満そうに呟いた。

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