海の城 空の扉
――護衛は多ければ多いほどいいってことよ
ラドリーンの肩でサラマンダーがリナムに言った。
「そういう事だ――全員に言っておく」
アスタリスは、はっきりとした声で言った。
「この姫の髪の毛一本でも傷つけるな」
夏空のような青い瞳が領主夫人を見据えた。
「もし何かあれば、俺はこの町を丸ごと滅ぼす」
それから、視線はテオドロスに移った。
「勝手に連れ去るようなことがあれば、この国を焼き尽くす。躊躇はしない。俺はこの世界の人間ではないからな」
「我が名誉にかけて、細心の注意を払います」
アルフレッド卿が頭を下げた。
「領主、シーツで構わぬが、清潔で大きな布を沢山用意しておけ」
アスタリスはそう言い残し、片手でラドリーンの頬を撫でてから竪琴を背負い直した。朝日を浴びて、色の変わる髪が黄金色に輝いた。
アスタリスが壊れた門扉を越えた途端、風を鋭く切るような音と共に、黒い巨大なドラゴンが空から舞い降りてきた。
大地が揺らいだ。
ゴオッという地鳴りの音がし、空が一気に暗くなった。
――扉だぁ……
リナムが空を見上げて言った。
青い空の一角に、大きく開かれた扉がぽっかりと浮かんでいた。
戸枠と扉板は真っ黒で、鉄でできているように見えた。向こう側にも空が広がっていたが、こちらの空より明るく、白っぽく見えた。
ラドリーンの肩でサラマンダーがリナムに言った。
「そういう事だ――全員に言っておく」
アスタリスは、はっきりとした声で言った。
「この姫の髪の毛一本でも傷つけるな」
夏空のような青い瞳が領主夫人を見据えた。
「もし何かあれば、俺はこの町を丸ごと滅ぼす」
それから、視線はテオドロスに移った。
「勝手に連れ去るようなことがあれば、この国を焼き尽くす。躊躇はしない。俺はこの世界の人間ではないからな」
「我が名誉にかけて、細心の注意を払います」
アルフレッド卿が頭を下げた。
「領主、シーツで構わぬが、清潔で大きな布を沢山用意しておけ」
アスタリスはそう言い残し、片手でラドリーンの頬を撫でてから竪琴を背負い直した。朝日を浴びて、色の変わる髪が黄金色に輝いた。
アスタリスが壊れた門扉を越えた途端、風を鋭く切るような音と共に、黒い巨大なドラゴンが空から舞い降りてきた。
大地が揺らいだ。
ゴオッという地鳴りの音がし、空が一気に暗くなった。
――扉だぁ……
リナムが空を見上げて言った。
青い空の一角に、大きく開かれた扉がぽっかりと浮かんでいた。
戸枠と扉板は真っ黒で、鉄でできているように見えた。向こう側にも空が広がっていたが、こちらの空より明るく、白っぽく見えた。