海の城 空の扉
猫はカップを両の前足で受け取ると、ゴクゴクと飲み干した。


ラドリーンは目を丸くした。


猫が立ってる。

猫が喋ってる。

猫がカップでミルク飲んでる。


目眩がした。


「こいつは妖精猫(ケット·シー)だよ、お嬢ちゃん。お前も何か飲むかい?」

男が言う。


――やめなよ。ここのものを飲み食いしたら地上に帰れなくなるよ

猫が言った。

――ついでに名前を教えちゃダメだよ


「随分と邪魔をしてくれるじゃないか」

男は苦笑した。


――だってその娘(こ)はオイラに鰊をくれるんだもの


「相変わらず鰊にはまってるのか?」

男はラドリーンの前に立った。

「俺の名はアスタリスだ。これでいいか、リナム?」


――うん


「お前の名をくれ」

アスタリスが促した。

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