海の城 空の扉
けれど今では、閉ざされた狭い空間に思えてしょうがない。
海の向こうに広い世界があるのは分かっている。
かつてはそこで暮らしていたのだから。
両親と兄がいたはずだ。
家族の事で覚えているのは、兄と駆け回った羊のいる草原、
ピカピカ光る父の剣、
そして炎に包まれた母の姿――
家族は死んでしまったのだろう。
誰もそうだとは言わないが。
「ようございますよ」
<侍女>の言葉にラドリーンは顔を上げた。
歪んだ鏡の中で<侍女>と目が合う。
「ありがとう」
ラドリーンは礼を言ったが、<侍女>はただ鏡の中で頷くだけだった。
<侍女>はラドリーンの身支度を終えると、部屋の中を点検し、一礼をして部屋を出て行った。
いつもの事だが、ラドリーンは自分が部屋の置物であるような気分になった。
<侍女>が自分の身の回りの世話をするのは、城の中を整える作業の一環に過ぎないのかもしれない。
海の向こうに広い世界があるのは分かっている。
かつてはそこで暮らしていたのだから。
両親と兄がいたはずだ。
家族の事で覚えているのは、兄と駆け回った羊のいる草原、
ピカピカ光る父の剣、
そして炎に包まれた母の姿――
家族は死んでしまったのだろう。
誰もそうだとは言わないが。
「ようございますよ」
<侍女>の言葉にラドリーンは顔を上げた。
歪んだ鏡の中で<侍女>と目が合う。
「ありがとう」
ラドリーンは礼を言ったが、<侍女>はただ鏡の中で頷くだけだった。
<侍女>はラドリーンの身支度を終えると、部屋の中を点検し、一礼をして部屋を出て行った。
いつもの事だが、ラドリーンは自分が部屋の置物であるような気分になった。
<侍女>が自分の身の回りの世話をするのは、城の中を整える作業の一環に過ぎないのかもしれない。