海の城 空の扉

 2

ラドリーンは目を覚ました。


寝台の帳(とばり)の向こうから、カサコソと音がする。


波の音だろうか?

それとも暖炉の燃えさしが崩れたのか。


ラドリーンは欠伸をして寝返りをうった。



いい加減に戻って来い

もう少しだけ



話し声?



もう時間がないのは分かっているだろう?

うん。でも今、ここを離れるわけにいかないんだよ

向こうにだって魚はいるさ

分かってる。でもオイラがいなくなると、ラドリーンが泣く――



ラドリーンはガバッと起き上がった。

もう明け方だろうか?

帳の向こうが妙に明るい。


恐る恐る帳を開くと、部屋の中にあの男がいた。

暖炉の前であぐらをかいて、リナムと話し込んでいる。

肩のあたりが妙に光っていて、銀髪に真紅の筋が混じっていた。

< 40 / 159 >

この作品をシェア

pagetop