海の城 空の扉
霧の森を越えて、ソフォーンと呼ばれる地からやって来た若者の物語だった。


若者はオーロラの髪をなびかせ、長剣を振るい、乱暴な悪鬼たちに支配されていた国を救う。

人々は彼を神と崇め、王に据えた。

神王は霧の森の向こうから幻獣たちを呼び寄せ、その魔力で国を治めた。

国は栄え、平和な日々が続いた。


『なれど時は過ぎ、

 神王は森の彼方を恋う。

   ソフォーン、我が父祖の地

   愛の花咲き、小鳥が枝に語らう

   懐かしき麗しの地よ

 民らは頭を垂れ、涙落して神王に問う。

   王よ、神なる王よ

   いずれの時にお戻りでしょう?

 神王、民らに誓いて

   国荒れし時、我が名を呼べ

   騎士を連れ、幻獣を呼び

   国、民を救わん――』


アスタリスの指が止まった。


「王様は帰ってきた?」

ラドリーンはそっと聞いた。


「いいや」

「国は荒れなかったの?」

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