海の城 空の扉
ラドリーンは瞼を開いた。

青く青い瞳が自分を見ていた。


「アルメリアってどこにあるの?」


「アルメリアという国はない」


「ないの? あれは作り話?」

ラドリーンは泣きそうな声で尋ねた。


「いいや。ミンストレルはどこかで起きた事柄を歌にして、別の場所で歌って広めるものだ。アルメリアとは『海の近く』という意味だ。おそらく、地名をそのまま歌う訳にはいかなかったのだろう」


「じゃあ、『呪われた玉座』は今もどこかにあるのね」

ラドリーンはホッと息をついた。


「その歌を聞きたいか?」

アスタリスは弦を弾いた。


「歌える?」


アスタリスは、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。


「バードは一度聞いた歌は忘れない」


竪琴が音楽を奏でた。


そう。この歌だ。


曲自体は、ごく単純なメロディーだった。

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