海の城 空の扉
『麗しの国アルメリア

  白き都に海風渡り――』



アスタリスの歌は、子守唄のようにゆったりと空気を満たした。



アルメリアの王と王子は戦に行った。

都に残った王妃の祈りにも関わらず、王は討ち死に、王子は行方不明になる。

城が落ち、捕えられた王妃は処刑台へ送られた。



『恐ろしき火の手が迫る最期の時

  罪なき妃の祈りを 神よ、叶え給え

 何人(なんぴと)も

  アルメリアの玉座に座る事なかれ

 全ての過ちが正され

  真の王が帰るまで――』



王妃の願い通り、アルメリアの玉座に座る者は、次々と非業の最期を遂げた。

いつしか王を名乗る者はいなくなった。

アルメリアの呪われた玉座は、今も主が帰るのを待っている――

そんな歌だった。



――王様がいないなら、誰が国を治めてるのさ

歌が終わると、リナムが言った。

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