海の城 空の扉
壁の半分はあるだろうか。

布を取り払って木枠だけになった、巨大な衝立(ついたて)のようにも見える。


「あれは竪機(たてばた)だな」


深みのある声に、ラドリーンはギョッとして振り向いた。

背の高い人影が、戸口を塞ぐように立っていた。


「大きなタペストリーを織る時に使う道具だ」

人影が言った。


ラドリーンは燭台の火を掲げた。

小さな炎を受けて、人影の髪が金色の光を帯びる。


「バード?」

「いかにも」

「ここで何してるの?」

「ご挨拶だな」


アスタリスは喉の奥でクックッと笑った。


「お前こそ、ここで何をしているのだ? 夜空の瞳のラドリーン」


ラドリーンはハッと気付いた。


「リナムを連れに来たの?」


アスタリスはゆっくりと歩み寄ると、ラドリーンの前に立った。
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