海の城 空の扉
◇招かれざる客
1
「お加減でも?」
<侍女>の言葉に、ラドリーンは不思議そうな顔をして振り向いた。
「近頃ずっと、ぼんやりとなさっておられます。お加減でも悪いのかと思いまして」
「調子はいいわ」
ラドリーンはぽつんと答えると、また窓の方を向いた。
気がつけば、アスタリスの事ばかり考えている。
彼は、自分の世界へわたしを連れて行こうといている……
この城から出たい気持ちはある。
アスタリスに惹かれているのも確かだ。
けれど目の前に差し出されているのは、どんな所かも知らない魔法に満ちた世界への鍵だ。
どうしてもためらってしまう。
「今夜は荒れそうね」
ラドリーンは独り言のように言った。
「お天気ですか? とても穏やかな日でございますよ」
<侍女>が怪訝そうに聞く。
「水平線に暗い雲が見える。それに海が凪ぎ過ぎている。荒れる前兆よ」
何年間も毎日毎日、海ばかりを見て過ごしてきた。
天候の変化など、すぐに読み取れる。
<侍女>の言葉に、ラドリーンは不思議そうな顔をして振り向いた。
「近頃ずっと、ぼんやりとなさっておられます。お加減でも悪いのかと思いまして」
「調子はいいわ」
ラドリーンはぽつんと答えると、また窓の方を向いた。
気がつけば、アスタリスの事ばかり考えている。
彼は、自分の世界へわたしを連れて行こうといている……
この城から出たい気持ちはある。
アスタリスに惹かれているのも確かだ。
けれど目の前に差し出されているのは、どんな所かも知らない魔法に満ちた世界への鍵だ。
どうしてもためらってしまう。
「今夜は荒れそうね」
ラドリーンは独り言のように言った。
「お天気ですか? とても穏やかな日でございますよ」
<侍女>が怪訝そうに聞く。
「水平線に暗い雲が見える。それに海が凪ぎ過ぎている。荒れる前兆よ」
何年間も毎日毎日、海ばかりを見て過ごしてきた。
天候の変化など、すぐに読み取れる。