海の城 空の扉
――こことソフォーンを繋ぐモノだよ。最初は霧の森にあったけど、今は動いている。何かがダメで、もうすぐ閉まっちゃうんだって。そうしたら行き来できなくなるから帰んなきゃ


リナムは『一緒に行こう』とは言わなかった。




夕暮れが近づくにしたがって、窓の向こうには鉛色の雲が垂れ込め、海に白波が立ち始めた。


風が唸る。


真夜中になる頃には、外は大荒れで、雷も鳴っていた。

アスタリスが現れた時、ラドリーンは暗い窓辺で外を見ていた。


「リナムは?」

アスタリスは部屋を見回した。


「雷が怖いそうよ。窓のない所へ行ったわ。たぶん、食糧庫あたりじゃないかしら」


「それは好都合だ」

アスタリスが呟いた。


「何ですって?」


「独り言だ。で、お前は怖くないのか?」


「雷が? 怖くないわ。見て。綺麗よ」


稲妻が空を切り裂いた。

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