海の城 空の扉
4
近づいてきた男は、白っぽい金髪と薄い茶色の瞳の持ち主だった。
他人と接する機会のないラドリーンには男の年頃を推し測る事はできなかったが、若者と呼ぶには少しばかり年かさな容貌だと思った。
男は優しげな笑みを口元に浮かべていた。が、目の鋭さが柔らかさを打ち消してしまっていた。
この男が客なのだろうか?
司教と聞いていたのに、僧服ではなく、騎士が着るような普通の服を着ている。外に立っていた騎士達よりも遥かに上質の物だったが、やはり十字架と狼を組み合わせた紋章がついていた。
「テオドロスです。お見忘れですか?」
男の顔に見覚えはない。
名前すら記憶にない。
ラドリーンは戸惑ったように男を見上げた。
「覚えておられないのですね? 10年前、わたしがこの城にお連れしたのですよ」
「ごめんなさい。ここに来る前の事は覚えていないのです」
「まだお小さかったから、無理もない」
男は手を差し出した。
「こちらへ。椅子におかけになって下さい」
ラドリーンは素直に手を預けた。
リナムがドレスの裾からはみ出さないかヒヤヒヤしながら、勧められた椅子に座る。
他人と接する機会のないラドリーンには男の年頃を推し測る事はできなかったが、若者と呼ぶには少しばかり年かさな容貌だと思った。
男は優しげな笑みを口元に浮かべていた。が、目の鋭さが柔らかさを打ち消してしまっていた。
この男が客なのだろうか?
司教と聞いていたのに、僧服ではなく、騎士が着るような普通の服を着ている。外に立っていた騎士達よりも遥かに上質の物だったが、やはり十字架と狼を組み合わせた紋章がついていた。
「テオドロスです。お見忘れですか?」
男の顔に見覚えはない。
名前すら記憶にない。
ラドリーンは戸惑ったように男を見上げた。
「覚えておられないのですね? 10年前、わたしがこの城にお連れしたのですよ」
「ごめんなさい。ここに来る前の事は覚えていないのです」
「まだお小さかったから、無理もない」
男は手を差し出した。
「こちらへ。椅子におかけになって下さい」
ラドリーンは素直に手を預けた。
リナムがドレスの裾からはみ出さないかヒヤヒヤしながら、勧められた椅子に座る。