海の城 空の扉
閉じた瞳にアスタリスの顔が浮かんだ。
からかうような笑みが
歌う時の真剣な眼差しが
竪琴に触れるよりもそっと、ラドリーンに触れる指先が――
「アスタリス」
ラドリーンは呟くように、その名を口にした。
抱きしめて欲しかった。
何も心配はいらないと、歌うようにささやいてもらいたかった。
でも、もう会えないかもしれない。
ラドリーンの眦(まなじり)から涙がこぼれた。
たとえ会えたとしても、アスタリスはテオドロス達に追い払われるだろう。
魔法の歌を歌えるとしても、彼はただの歌人(うたびと)だもの。
武装した騎士達に勝てるはずがない。
冷たい指がラドリーンの涙を拭った。
目を開けると、テオドロスが傍らに跪いていた。
次の瞬間、リナムがテオドロスの手に素早い一撃を与えた。
「リナム!」
ラドリーンは慌てて起き上がり、毛を逆立てて唸っているリナムを抱き上げた。
見ると、テオドロスの手の甲に血が滲んでいた。
「ごめんなさい」
ラドリーンは謝った。
「この子は知らない人を警戒するの」
からかうような笑みが
歌う時の真剣な眼差しが
竪琴に触れるよりもそっと、ラドリーンに触れる指先が――
「アスタリス」
ラドリーンは呟くように、その名を口にした。
抱きしめて欲しかった。
何も心配はいらないと、歌うようにささやいてもらいたかった。
でも、もう会えないかもしれない。
ラドリーンの眦(まなじり)から涙がこぼれた。
たとえ会えたとしても、アスタリスはテオドロス達に追い払われるだろう。
魔法の歌を歌えるとしても、彼はただの歌人(うたびと)だもの。
武装した騎士達に勝てるはずがない。
冷たい指がラドリーンの涙を拭った。
目を開けると、テオドロスが傍らに跪いていた。
次の瞬間、リナムがテオドロスの手に素早い一撃を与えた。
「リナム!」
ラドリーンは慌てて起き上がり、毛を逆立てて唸っているリナムを抱き上げた。
見ると、テオドロスの手の甲に血が滲んでいた。
「ごめんなさい」
ラドリーンは謝った。
「この子は知らない人を警戒するの」