海の城 空の扉
驚いた事に、騎士とリナムは顔見知りだったらしい。


「仕事だ。お前こそどうした?」


――オイラはね、ニシンを食べに来たの


「ここまで?」

騎士は片眉を上げた。


――えっと、ここまで来るつもりじゃなかったけど、ラドリーンが来たから。オイラはラドリーンの護衛をしてるんだ。そんで、お礼にニシンとソーセージを貰うの


どこでそういう話になったのか分からない。

でも、リナムは大真面目のようだった。


「お姫様の守護騎士とは出世したものだな」

マスタフと呼ばれた騎士も大真面目に言った。


――でしょ? これで兄者達にも誉めてもらえるよね?


「そうだな。だが、とりあえずはこっちに来い。お姫様が海に落っこちたら困るだろ」


リナムはラドリーンの腕をすり抜けてマスタフの腕の中に跳んだ。


――ラドリーンは誰が抱っこするの?


「お姫様はお付きの者が手を貸す」


――ふうん

リナムはどことなく不満げだった。

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