宝物〜絆〜
 リビングに入ると、カレーの香りが部屋中に漂っていて、食欲をそそられる。

「秀人、あんがと。つか、良い匂いだな」

「匂いだけな」

 秀人は謙遜するように肩を竦めて小さく笑った。

「うわっ、サラダも作ってくれたんだ。これも美味そう」

 テーブルに並べられたサラダは盛り付けまで凝っていて、食うのがもったいないほどだ。

「それも見た目だけ」

 秀人は照れを隠しているような笑い方をする。

「そう謙遜すんなって。マジありがとな」

「おう」

 なおも謙遜する秀人に素直に感謝の気持ちを伝えると、秀人は嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔があまりにも綺麗で、キラキラと輝く瞳に吸い込まれそうになる。

 私も自然と笑顔になり、軽い足取りでテーブルに向かった。

「いただきま〜す」

 二人並んでソファに座り、秀人の作ってくれたメシを一緒に頬張る。

 ただ、それだけなのに。それだけで本当に幸せ。

 もう止められない。この好きって気持ち。

 秀人は私の事どう思ってんのかな。ただの悪友くらいにしか思ってねえかも。

 そんでも良いや。

 いつか秀人にピッタリの可愛い彼女が出来るまで、秀人を大切にしてくれる子が現れるまで、私が一番近くに居て、秀人の事を支えていよう。
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