宝物〜絆〜
「これは前の高校のだよ。俺らが住んでたトコの近くに高校あんじゃん? 俺、今度の月曜から、そこに転入すんの。確か美咲も同じ高校だよな。制服も一緒だし」

 秀人は風に靡く髪を掻き上げて柔らかく微笑む。

「マジ? えっ、マジで?」

「二回も聞かなくてもマジだよ」

 素直に嬉しかった。引っ越す前は毎日のように遊んでいた。

 当時の私が家庭での事を我慢出来たのは、秀人が居てくれたからだ。って言っても、秀人には家族の事、言ってないんだけど。

 でも、秀人が居てくれるだけで心の支えになってたのは紛れも無い事実。

 なのに別れはあまりにも突然だった。

 この地方では珍しい大雪が降った翌日。何も知らない私は、遊びに誘われて喜んで出て行った。それが帰り際に突然、明日転校だって聞かされて。ろくに話も出来ないまま、秀人は行ってしまった。結構ショックだったんだよ?

「確かに、こっから神奈川の高校通う訳にもいかねえよな。つか、マジ電話してくれれば良かったのに」

「わりぃ。本当バタバタしてたからさ。それより美咲の方こそ何でこんなとこに居んだよ?」

 秀人が聞いてきたのは、私の家と学校の配置だと、この公園はあまり居るような場所じゃないからだろう。それを言うなら秀人もなんだけど。
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