宝物〜絆〜
 それによって話題自体は終わったのに、どうしても気になってしまう。

 ボーッと煙草を吹かしている私の頭の中では、店長と永田さんの会話がリピートされていた。

 やっぱどう考えても私が原因だよな。落ち込んでんのかキレてんのか、話してくれなきゃ分かんねえよ。

 出てくれるとは思えねえけど、とりあえず電話してみっか。

「――咲ちゃん? 灰が落ちそうだよ。どうしたの、ボーッとしちゃって」

 不意に店長に話し掛けられ我に返る。

 言われて自分の手元を見ると、ついさっき火をつけたばかりの煙草がジリジリと燃え、今にも灰が落ちそうになっていた。

 私は慌てて灰皿の上に煙草を移動させて灰を落とす。

「あっ、いや……。何でもないです。ちょっと考え事を……」

 咄嗟にごまかしたのは良いが、何故か店長が私を見る目は徐々にニヤついていった。

「ふーん。どうせ秀人くんの事でも考えてたんでしょ。本人が目の前に居るんだから妄想なんてしなくて良いのよ」

 どうやら店長のニヤつきは私をからかう瞳だったらしい。

「何ですぐにそっちに持ってくんですか!」

 思わず声を荒げると、店長は相変わらずニヤついたままで煙草の火を消して、「さっ、お仕事お仕事ー!」と言って去って行ってしまった。
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