宝物〜絆〜
 店長が出て行った後、休憩室に残された私は秀人と顔を見合わせて苦笑い。

 というより、秀人はどうか分からないが、私の場合、自分が考えている事を秀人に見透かされそうで、笑ってごまかすしかなかった。

 永田さんに視線を移すと、何やら考え込んでいる。

「俺らも行くか」

 秀人はボソッと呟いてから煙草を揉み消した。

「ああ」

 私も最後の一口を堪能してから秀人に続く。

「あらやだ、もうそんな時間なのね」

 永田さんにも声をかけようと思ったら、ちょうど気がついて珈琲を一気に飲み干していた。

 私はロッカーからエプロンを出して休憩室を後にする。

 それから連休中は良くも悪くも変わった事なく過ぎて行く事になる。

 そう、もちろん香奈にかけた電話も出てくれる事はなかった。

 まあ私からの電話に出るわけがないんだし、香奈の事は仁美たちに任せよう。



     * * *



 連休明けといえど四日間の休みでは学校もたいした変化はなく、いつも通りの朝を迎えた。

 珍しく立川が既に来ていて、秀人の前の席に座って話しているのも、騒ぐ程変わった事ではない。

――そう思った直後に変化が訪れた。たった今、教室に入って来たのはバカ西。

 私と秀人は何となく目で追ってしまった。
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