宝物〜絆〜
「よお、晃。久しぶりだな」

 私たちの視線を追うように立川が振り返り、バカ西が来た事に気づいて声をかける。

 バカ西は立川の声に反応してこっちを見た。

 当然、私とも目が合う。恐らく秀人とも。

 するとバカ西は立川に返事をする事なく視線を逸らし、自分の席に歩いて行った。

「……ったく、分かりやすい奴だな」

 立川はこっちに視線を戻しながら苦笑混じりに呟く。

 私は言葉に詰まって「ハハ」と苦笑いを返した。

「まあ、俺らが居るからな」

 秀人も苦笑しながら答える。

「本ッ当ガキだな、あいつは」

 立川は苦笑したままでぼやくように呟いた。

 ちょうどその時、茜が教室に入って来る。時間に余裕を持って動くタイプの茜が、私より遅くに登校してくるのは珍しい事だ。

「おっす茜、珍しいな」

 私が声をかけると、すぐに気付いてこっちに向かって来る。

「おはよ。エヘッ。寝坊しちゃった」

 茜はごまかすように笑いながら答えた。そして私の前の席にチョコンと座って言葉を続ける。

「今日カラオケだね。直で行くんでしょ?」

 艶のある綺麗な髪が、窓から差し込む日差しに照らされて、より一層輝いて見えた。
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