宝物〜絆〜
 唯は何とも形容しがたい複雑な表情を浮かべている。

「ハハ。そんな風に見えるんだ」

 私は動揺して何て返事をして良いか分からず、適当に話題を流そうとした。しかし唯は更に突っ込んだ事を聞いてくる。

「それで美咲ちゃんは神城さんの事どう思ってるの?」

 唯の瞳は全てを見透かしているようでマジで焦る。

 ただ秀人に対する気持ちは、誰かに言うつもりも、ましてや本人に言うつもりもないから、黙っておく事にした。

「どうって別に。何で?」

 気持ちを悟られないように何とか平静を装って聞き返してみる。

 すると唯はとんでもない事を言い出した。

「何かお互い好きみたいに見えるからさ。多分みんな付き合ってると思ってるんじゃないかな」

 まさか秀人が……? いや、有り得ねえ。

「いやいや、それはないっしょ。それより服決めようか」

 更に心拍数の高まった私は、ひとまず今は考えないようにしようと思い、話題を変えた。

「そうだね。急がないと遅くなっちゃう。突然ごめんね」

 唯が同意してくれたので、私は唯を連れて寝室に向かった。寝室にはクローゼットがある。

「気に入るのあるか分かんねえけど、適当に好きなの選んで」

 唯の好みが分からないから自分で見てもらう事にした。
< 205 / 475 >

この作品をシェア

pagetop