宝物〜絆〜
 頭の中で突っ込みを入れていると、私の思考を代弁するかのように秀人が口を開く。

「いやいや、いきなり何言ってんだよ?」

 秀人は立川を見ながら部屋の鍵をポケットにしまった。

「へっ? お前ら付き合ってんだろ? だったら良いじゃん」

 立川は涼しい顔で答える。

 何でみんなしてそういう勘違いすんのかな。本当にそんな風に見えてるんだろうか?

 あまりにも唐突だったせいで、普通ならパニクってしまいそうな話題なのに、逆に冷静になった私。

「いや、俺ら別に付き合ってねえし」

 秀人も冷静に答えている。

「ふーん。まあ良いや。とりあえず一緒に住まねえならさ、たまに泊まりに来て良い?」

 立川はどことなく腑に落ちないといった表情をしていたが、すぐに話題を切り替えて秀人に質問した。

「別に良いけど、布団ねえよ」

 秀人の台詞に対して、立川は特に問題もないような様子で返す。

「それなら寝袋持ってくから問題ねえよ。寝袋っていくらくらいすんのかな……」

 おいおい。わざわざ買うって、一体こいつはどんだけ泊まりに行くつもりだよ?

 秀人に視線を移すと、私と同じような事を想像したのか、苦笑いしている。

 立川はといえば、まだ「後で値段調べてみよ」などと独り言を呟いていた。
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