宝物〜絆〜
 私を助けようとしてくれてる人が……、うん。多分、助けようとしてる筈? とにかく、その人がピンチじゃん。助けてくれるのは嬉しいけど、巻き込む訳にはいかねえし。

「あの、悪いのは私だから……」

 ある程度の事は覚悟の上で口を開いた私だったけど、後ろの人に遮られた。

「やっても良いけどさ。その前に閉めた方が良いよ?」

 後ろの人、なんつった? やっても良いけどって聞こえたけど、ダメでしょ。だいたい、後ろの人は何も悪くないし。マジで巻き込む訳にはいかないよ。それより閉めるって何を?

「閉めるだと?」

 ガラの悪い男は、怪訝な顔付きで後ろの人を睨みつける。

「そっ。閉めるの。そーこ」

「なっ……!」

 後ろの人が、どこかを指差しているのか、目の前の男は視線を下に移した。

 私もつられて男の視線の先を見る。あっ、成る程。そこの事ね。

 みるみるうちに男の顔は紅く染まり、「覚えてろよ!」というお決まりの捨て台詞を吐いて去って行った。

 私は助けてもらったお礼を言う為と、聞き覚えのある声の主を確かめる為に振り返った。
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