BirthControl―女達の戦い―
両親は自分達の決めた相手と娘を結婚させるためなら、手段は選ばないだろう。


政治家にとって、誰かを思い通りに動かすことなんて朝飯前なのだから。


仕方なく遥香は看護師の資格を取ったら結婚すると交換条件を出した。


そうでなければ結婚はしないと脅迫めいたことを言ってまで……


子供の頃、風邪を引いたり、怪我をするたびに、近所にある病院に連れていかれた。


そこで優しく患者さんの処置をしたり、お医者さんの指示でテキパキと仕事をする看護師さんを見て、すごいなぁと憧れの眼差しで見ていたのを思い出す。


遥香の看護師になる夢は、その頃からのものだった。


その憧れの看護師というのが、実は丸山の妻なのだ。


だからこの施設で働くようになって、丸山に再会した時には、運命めいたものを遥香は感じた。



自分の過去を知る人間とは縁を切ってここに来た遥香だったけれど、丸山なら逆に安心できた。


施設内で遥香の過去を知っている人間は、この丸山と、ここの住人である久枝だけだ。


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