BirthControl―女達の戦い―
拉致されて子供を身籠らせて金を得る組織があると聞いたことがある。


散々辱しめを受けた後、妊娠させられ、挙げ句の果てにゴミのように棄てられるのだと。


もしそうなら、そうなる前に舌を噛みきって死のう。


遥香はそこまで覚悟した。


見えなくても振動から、やはり車は下流世帯区域に向かっているんだと推測できる。


上流世帯区域ならば道路はきちんと舗装されているため、車に乗っていても振動をあまり感じないのだ。


けれど下流世帯区域に向かうほど、道路は整備されておらず、激しい振動を感じるのだと遥香は知っていた。


どのくらい時間が経っただろうか?


目隠しをされている遥香には、どこをどう走っているのか見当もつかなかった。


振動からわかるのは下流世帯区域に入ったんだということだけだ。


ふいに車が停まった。


ドアがガラッと開く音がする。


どうやら目的地に着いたようだ。


緑の匂いが遥香の鼻をかすめる。


ここは下流世帯区域の中でも、森に近い場所なのかもしれないと遥香は思った。


腕を掴まれ、背中を押されながら、車から降りるよう促される。


さっきまで男性だと思っていた犯人達は、どうやら女性らしいとその時感じた。


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