BirthControl―女達の戦い―
誰も一言も口を開くことなく、この目的地まで来たことで、勝手に男性だと思い込んでいたけれど、遥香の腕を掴む手も背中を押す手も、細く柔らかい感触がしたのだ。


さっき車に連れ込まれた時にはわからなかったけれど、冷静になって観察すればよくわかる。


目隠しをされているから余計に他の感覚が研ぎ澄まされているのかもしれない。


男性ならもっと汗臭くて特有の匂いがするはずなのに、それは全くなく洗剤ような清潔な香りがした気がした。


足に食い込んでいたロープが外され、歩けとばかりに背中を押される。


ずっときつく縛られていた足首はきっと鬱血しているに違いなかった。


ズキズキと痛みが走り、血が止まっていた場所に血液が流れ込むかのように、その部分が痺れてくる。


遥香はうまく歩けなくて、足がもつれ派手に転んでしまった。


まだ手首は縛られたままだったため、手で受け身を取ることも出来ずに、顔から地面に倒れてしまう。


幸い、地面はコンクリートではなく土だった。


それでも顔や目隠しにされていた布にも、少し水を含んだ土がかかりそれを湿らせた。


しばらく立てないでいると、両側から二人の人間に両脇を抱えられ、無理矢理立たされる。


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