BirthControl―女達の戦い―
遥香はコクンと息を呑んだ。


その法案が議論されているのは知っていたが、それがまさか自分の両親が推進しているものだとは知らなかったからだ。


それに犯罪を野放しにしている事実も、遥香は全く知らなかったのである。


「ここにいる女性は皆、子供が出来ずに夫に離縁されたり、病気で子宮を失い結婚さえ出来ない者、男性を愛せない者もいる……

そういう女達は、生きることも否定されて社会から抹殺されていくんだ!

この世に生まれて生きる権利は誰にだってあるはずなのに……おかしいだろ?

お前はそうは思わないか?」


射るように遥香を睨み付けるカナメの目を見ながら、ああ、そうか……と遥香は思う。


ここに住む女性達はみんな、今の政治、今の社会、今の時代に翻弄され、辛く悲しい思いをしてきたんだ。


それ故に、この子供第一主義を先導する遥香の両親に恨みをもっている。


遥香が誘拐されたのは、そういったいろんな思いが一つになって決断された最終手段なのかもしれない。


そうでなければ、こんな危ない橋は渡らないだろう。


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