BirthControl―女達の戦い―
遥香の顔が見えた途端、譲と和子は絶句し、思わずその場から後ずさった。


昔の面影など微塵も感じられないその姿に、哀しみにも似た虚しさが広がっていく。


落ち窪んだ目に、 こけた頬……、パサパサになった髪の毛は伸び放題になっている。


体もすっかり痩せ細って、浮き出た鎖骨が痛々しいほどだ。


「お……前は、死ぬ気……なのか……?」


やっとの思いで口をついた言葉は、遥香の強い意志が譲に伝わったかのように、思わず出てしまったものだった。


その言葉に反応したのか、虚ろだった遥香の瞳に、怒りと憎しみの色が宿ってくる。


さ迷っていた視線は譲達に定まり、さながら蛇に睨まれた蛙のような状況になっていた。


「ころし……て……」


遥香が声にならない声でそう呟いた。


譲達はコクンと息を呑む。


(殺して……だと……?)


やはり遥香はこのまま餓死するつもりだったんだと気づく。


自分で死ねないのなら、いっそ殺してくれと……


そう言っていた。


「な……に言ってるんだ!
そんなこと出来るわけがないだろう?」


カラカラになった喉からは掠れた声しか出てこない。


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