BirthControl―女達の戦い―
そんな譲の言葉に、遥香は静かに反発した。


「できるよ……

お父さんは、あんなに人を殺せたじゃない……」

遥香があの事件のことを言っているんだということはすぐにわかった。


だけどあれは遥香を助けるためにやったことだ。


なぜわかってくれないんだと譲は思った。


「あれ……は、お前のために仕方なかったんだ!」


そう言ってはみたけれど、遥香には全く伝わらない。


「あの人達は、最初こそ乱暴だったけど……

あそこにいた3週間……すごく優しくしてくれたのに……

私のせいで……あんな殺され方するなんて……

私を助けるためだけなら……殺さなくても出来たはずだよ?」


強い憎しみを込めた目で、遥香は譲を睨みつける。


「あの場合、お前を無事にあそこから助け出すには仕方なかったんだ……

わかってくれ、遥香」


譲は必死にあの作戦の正当性を遥香に伝えようとした。


「違う……でしょ?

私のためだけじゃなくて……自分のためでしょ?」


いつからこの子は親にこんな口をきくようになったんだろう?


遥香の態度に呆然としながら、譲はその勢いに何も言うことができないでいた。


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