BirthControl―女達の戦い―
しばらくそうしていただろうか?


遥香は何かを思い付いたように、譲の方に顔を向けた。


睨まれるのかと思っていたのに、どういうわけか遥香は薄く笑っていた。


譲はその表情を見て、なぜかゾッとする。


痩せこけた顔で薄く笑った表情は、もう譲の知っている娘ではなかった。


「お父さんが私を殺せないって言うならお願いがあるの」


先程の憎悪に満ちた声よりは少しだけ穏やかになったものの、まだ遥香のトーンは変わらない。


遥香が前の遥香に戻ってくれるなら、どんな願いでも聞いてやろうと、譲は思った。


「なんだ?言ってみなさい」


こんな時まで威厳を保とうとする自分に嫌気がさしながら、譲はそっと遥香を見た。


遥香は相変わらず冷めた目付きで譲を見ていたけれど、それからはっきりとした口調で言った。


「私をOldHomeで働けるようにしてほしいの」


「なっ!何を言ってるんだ!

無理に決まってるだろう?」


驚きで譲の声が少し上擦る。


「いいえ、無理じゃないはずよ?

お父さんが直接関わってる施設だもの

私を看護師としてあそこで住み込みで働けるようにして」


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