BirthControl―女達の戦い―
「どうしてあの施設で働くことが、償いになるんだ?」


わからないといったように、首を左右に振りながら譲はそう聞いた。


「あそこには、殺された彼女達と同じように子供が出来ない下流の女性がたくさん働いてるって聞いたわ……

それにお父さん達が作った法律によって、この社会から抹殺されたお年寄り達もたくさんいる

せめてそういう人達を癒すことで、自分が生きていて良かったって思いたいの!

あそこにいる人達の犠牲のおかげで、私はここで何不自由なく生活してたんだってことが、はっきりわかったから……」


譲は哀れむように遥香を見た。


もうこの子には何を言っても無駄なんだと、遥香の様子でわかったからだ。


犯人に拘束された身柄は奪い返せたけれど、心はまんまと奪われてしまったのだと譲は思った。


下流の人間に成り下がることを希望する遥香は、もうこの社会では負け組だ。


それを認めなくてはならない自分にも、そんな娘の親であるという事実にも、本当は譲のプライドが許さなかった。


だが遥香の意志は固い上に、OldHomeで働くことを認めなければ、命を絶つかもしれない。


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