BirthControl―女達の戦い―
――ガシャン!!
玄関のドアが勢いよく閉まる。
百合子が何か言っていたような気もするが、特に興味もなかった。
毎月毎月、排卵日になると早く帰ってこいとヒステリックに言われ、夜は夜でまぐろ状態で待っていられても、洋一には拷問でしかない。
(ほんと、萎えるよなぁ……)
百合子と大学で付き合い始めた頃は、趣味も合って話も弾んでとても楽しかった。
体の繋がりよりも心の繋がりを大切にしていたし、あの頃はまだそれだけでも十分幸せだったのだ。
初めて同士で経験もなかった洋一と百合子は、その行為に悦びを見いだすことが出来きなかった。
それでも互いを必要だと信じて結婚したんだけれど……
失敗だったかもしれない……と洋一は思う。
結婚して子供が出来ないことが、こんなにも生活を逼迫し、夜の営みを強要されることになるなんて、洋一は思ってもみなかったのだ。
百合子に不妊治療のために病院に行って欲しいと言われた時も、洋一はそこまでして子供が欲しいとは思えなかった。
けれどその頃はまだ妻を愛していたし、三年出来なかったら離婚しなくてはならないという法案がちょうど発表されたばかりだったのもあって、仕方なく同意したのだ。