BirthControl―女達の戦い―
人質とは名ばかりで、三週間の間に遥香はみるみるうちに、仲間たちとも馴染んでいった。


自分が誘拐されているというのに、要達の辛い思いを察して泣いてくれるような……


遥香はそんな心優しい娘だった。


看護学校を卒業したら、看護師になるんだと嬉しそうに語ってもくれた。


梨央が医者だとわかると、進んで手伝いをしながら、医療の知識を学ぼうとしたり、怪我をした仲間を看護したり……


いつの間にか遥香はあの場所になくてはならない大切な存在になっていた。


あの時、真っ先に電話で連絡を寄越したのも遥香だった。


他の女達は気づいていなかったのかもしれないが、遥香はそれくらい勘のいい娘だったと言えよう。


遥香の第一声はこうだった。


「戻ってきちゃダメ!」


震える声を押し殺しながら、必死にそう訴える遥香の言葉を聞いて、要はやられたと思った。


そしてあの場所から離れたことを心底後悔したのだ。


「遥香!

お前は!?大丈夫なのか!?」


鼻を啜る音が聞こえたかと思うと、少し慌てたような遥香の声がした。


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