BirthControl―女達の戦い―
「行くわよ?」


梨央の合図とともに、二人は高級料亭の敷居を跨いだ。


格子戸をくぐり抜け、石畳を歩いていくと、奥には素晴らしい日本庭園がライトアップされていて美しい。


部屋から庭を眺めながら酒を呑めるというのが、この店の自慢であった。

ゆっくりと裏手に周り、客のいる離れの方に向かう。


客人が客人だけに、渡り廊下で繋がれた密室を用意したようだ。


機密事項などが漏れては困るということだろう。


それならば私達など呼ばなければいいのに……と要は思った。


要の前を歩く梨央が、そんな思いを知ってか知らずか、そっと振り向いて困ったように笑う。


彼女に心配をかけないように、要もまた唇の端を少しだけ上げて曖昧に微笑んだ。


それからふと頭をよぎった疑問を投げかけてみる。


「なぁ、今日はどんな客なんだ?

いつもと雰囲気違うけど」


「そうね、確かに今日は特別なお客様よ?

だから要も心して接待に集中してね?」


小声で含みのある笑いを浮かべながら梨央はそう面白そうに言った。


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