BirthControl―女達の戦い―
要は怪訝な顔をしたものの、石畳につまづかないように足元に集中していたため、それ以上は何も言えない。


(……くそっ!歩きづらい!!)


今日も客のリクエストに答えたのか、梨央が用意したのは和服だった。


慣れない草履に足元が危うい。


梨央が優雅に石畳を歩きながら離れに向かっているのに対して、要のそれはお世辞にも優雅とは言い難い。


それでも何とか転ぶことだけは避けようと必死に梨央に着いていく。


時々立ち止まり、振り返っては要を待つ梨央が、なんだかバカにされてるんじゃないかと恨めしく思ったりするのは、こんな自分が情けないからかもしれない。


「失礼します

本日はお招きにあずかりましてありがとうございます」


梨央が臆することなく襖を開いてそう言えば、要もそれに習って正座で三つ指をつきながら、ゆっくりと頭を下げる。


「おぉ、来た来た

挨拶はいいから、こっちでお酌しなさい」


「あの……これはどういうことでしょうか?」



「なあに、男ばっかりで呑んでてもつまらんだろう?

この界隈では有名な美人を二人呼んだんだ、喜べ!」


「しかし……まずいのでは?」


「大丈夫、顧客の秘密はきちんと守ると評判なんだ

君たちもたまには羽目を外したまえ」


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