BirthControl―女達の戦い―
頭を下げた状態で客である男たちの会話を聞いていた要は、どうやら自分達を呼んだ客と、来るのを知らなかった客がいることを知る。


しかも知らなかった方の客はどうやら要達を疎んじている様子だ。


溜め息をつきたいのを我慢しながら、ゆっくりと顔を上げると、見覚えのある顔がそこにあった。


「――ッ!」


何か言いそうになるのを、寸前で梨央が要の肩に手を置いて、ズイッと先に前に出た。


この様子だと梨央は彼がいることを始めから知っていたらしい。


少しむくれながらも、顔には何とか出さずに、要も客の側に近づきお酌をする。


嬉しそうにお猪口を手にしてお酌されるのを待つこの男にも、なんだか見覚えがあるような気がした。


梨央が酌をしているのは、さっきこの男に自分たちを呼んだことを問いただしていた男だ。


梨央は平然とした顔で彼に何か話しかけている。


たぶん要がそちらの男についたら、何をするかわからないと思ったんだろうが、飄々とした梨央の態度は要を苛つかせた。


(……あの男だぞ?)


要たちの仲間を殺した張本人。


平静でいられるわけがない。


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