BirthControl―女達の戦い―
チラチラと梨央達の方を見ていると、自分の側にいた客が自慢気に話し始めた。


「あれ?もしかしてあいつの顔わかっちゃった?
まあ有名だからなぁ
当たり前かぁ、あははは!

でも俺だって結構有名なんだよ?知らない?」


もうすでに酔っぱらっている様子で、男はそう言って顔を近づけてくる。


確かにさっき見たことがあるとは思ったが、こんな酒臭い息を撒き散らせている男に、要の思考回路は停止していた。


体よく男の顔を押し戻しながら、要は素直に聞いてみる。


「見たことあるなとは思っていたんですが、思い出せなくて……

確か政治家の方ですよね?」


「そうそう、政治家だ

お前たちのような者でも、政治家の顔には見覚えくらいあるんだなぁ」


悪びれもなくそう言った男の言葉に、要は腹が立った。


(……お前たちのような者って、どんな者なんだよ!)


若干、眉間に皺が寄りそうになったが、斜め前で酌をする梨央に目で制された。


「そりゃあ、テレビでよく拝見してますから

私たちのようなものでも稲田先生や麻生先生のことは存じ上げておりますよ?」


すかさず梨央が自分はしっかり把握しているんだということをアピールする。


しかもさりげなく嫌味をこめて……


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