BirthControl―女達の戦い―
それと同時に要は、自分が酌をする相手が稲田官房長官だということにようやく気付く。


稲田は麻生の前の厚生労働大臣だ。


癒着があってもおかしくはないだろう。


それにしても……


目の前にいるこの男が遥香の父親だと思うと、なんだか不思議な気がする。


憎むべき相手が、信頼する友人の父親だという事実が、急に要の胸に突き刺さった。


遥香はどのくらい辛い思いをしたのか、それは要たちには計り知れない。


実の父親が復讐すべき相手だなんて、辛すぎる現実だ。


「それじゃあ、こちらのお二方も政治家の先生でいらっしゃるんですか?

ごめんなさい、勉強不足で稲田先生と麻生先生くらいしかわからなくて……」


梨央がこの四人の関係を探るべく、さっきから一言も発しない他の二人についても、さりげなく口の滑らかな稲田に問いかけた。


「あぁ、こいつらは政治家じゃあないから、知らなくて当然だ

麻生くんの隣にいるのは秘書の夏木

それから私の隣にいるこいつは、OldHomeの責任者だ」


「稲田先生!

よく知りもしない素性の者に、そこまで詳しく話す必要はないんじゃないですか?」


稲田の言葉を遮ってそう言ったのは、もちろん麻生だ。


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