BirthControl―女達の戦い―
それでも何でもないふりをして、要は稲田を持ち上げた。


「いえ、お気遣いなく

そんな私たちにもこういった機会を設けてくださっているんですから、稲田先生には感謝しております」


心にもないことを口にしながら、要は心の中でアカンベーをする。


そんな要の気持ちなど知るはずもない稲田は、満足そうに笑って機嫌を良くしていた。


「まあな、私ほどになるとやはりそこまで気を回せるようになるってことだ

その気持ちを忘れるな?

そうすれば会食にはお前たちを呼んでやる機会も増えるだろう」


恩着せがましくそう話す稲田に、反発しそうになる気持ちを抑えて、ありがとうございますとだけ言って頭を下げた。


きっと今の自分は、反抗的な目をしているかもしれないと思ったからだ。


それから気を取り直してまた稲田に向き合う。


「先生にはお嬢さんはいらっしゃるんですか?」


「残念ながら私には息子が三人しかいないんだよ

娘も欲しかったんだがな?

麻生くんのとこは、一人娘がいたな?」


そう聞かれて麻生は瞬時に身を固くした。


隣に座る秘書の夏木がすかさず麻生の代弁をする。


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