BirthControl―女達の戦い―
チラッと見えたその医師の顔は、若くはない風貌だった。


ロマンスグレーの髪に、品のいい目尻の皺が優しそうな雰囲気を纏っている。


医院からまた自宅に戻るだろうと、二人はしばらく近くに車を停めて、丸山が出てくるのを待った。


すると程なくして、丸山が白のワゴン車から黒のセダンに乗り換えて、医院から出てくるのが見えた。


要はゆっくりとまたその後をつけていく。


自宅に向かうのだと思われたその車は、なぜか中流世帯区域に入っていった。


「医者だし、ましてや施設のお抱え医師なら、住まいが中流世帯区域ってことないわよね?」


首を傾げながら梨央がそう言うと、要も頷きながら答える。


「あぁ、間違いないだろう

病院が上流にあるんだから、自宅もそうに決まってる

何か用があるのかもしれないな?」


中流世帯区域に入りしばらく走った頃、あまり人気のない場所で丸山の車は停まった。


こちらも気付かれないように、少し離れた場所で車を停めて様子を窺う。


息を潜めていると、突然運転席の窓を叩く音がした。


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