BirthControl―女達の戦い―
「そんなことはわかってる

もう法案が可決されるのも時間の問題だろう

お前はなんとか運営を保てるようにしろ!

なんのために今までお前に任せてきたと思ってるんだ!

代わりはいくらでもいるんだぞ!?

じゃあ頼んだからな?」


ガチャ……ツーツーツー……


高志は携帯を見つめながら呆然とした。


言いたいことだけ言って電話を切ってしまった麻生に、憤りを感じる。


ここを立て直すために努力しろと叱咤されるのは仕方がない。


だが最後に言われた言葉だけは許せなかった。


(代わりはいくらでもいるだって?)


高志がどんな思いでこの施設を必死に守ろうとしていたか知らないはずがないのに……


やはり自分かいう存在は認められていなかったんだ、いいように使われていただけなんだと今更ながらに思い知る。


だからといって辞めるわけにはいかない。


なぜならここの秘密を知っている自分を、麻生が生かしておくはずがないからだ。


通路の壁にもたれながら、携帯電話をポケットにしまう。


どうしようもない葛藤を抱えながら、A棟に戻る扉にカードキーを翳す。


シュンと音がして、扉は開いた。


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