BirthControl―女達の戦い―
高志はこの親子に揃ってバカにされているような、そんなやりきれない思いでいっぱいになった。


「すみません……

青柳さんに聞きたいことがあったものですから……

確かお部屋はこちらの方ではなかったかと探していたんです」


予想に反して遥香は即座に謝った。


しかし高志の苛々は収まらない。


「ここは立入禁止禁止区域だぞ!

どうやって入ったんだ!」


ここに入るにはいくつかの扉があり、簡単には入れないような作りになっている。


遥香のIDカードではここまで入れるはずがないのだ。


「それは……」


案の定、遥香は動揺するように目を泳がせ、言葉を濁した。


「どうやって入ったんだと聞いてるんだ!

事と次第によっては、ただじゃすまないぞ!」


一瞬怯んだように見えた遥香は、次の瞬間にはもう落ち着いているように見えた。


「これが……落ちていて……

青柳さんのじゃないかと思って追ってきたんです……」


見ると、そこにはカードらしきものが握られていた。


引ったくる勢いで奪い取ると、それは何も書かれていないIDカードだった。


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