BirthControl―女達の戦い―
(もしも……

もしも遥香たちが間に合って、私を助け出すことが出来たなら……)


久枝は遥香の、百合子の、ここで働く全ての女性の笑顔を見ることが出来るんだろうか?


そして女性たちが自由な選択を出来るようになった世の中を自分の目で確かめることが出来るんだろうか?


ふと生き残る可能性を考えて、久枝は慌てて頭を振った。


こんなことじゃやるべきことが疎かになる。


死を覚悟した上で臨まなければ、少しの未練が失敗に繋がるかもしれない。


「じゃあ久枝さん、こちらに入ってもらえますか?」


従順で穏やかそうに見えるこの男もまた、政府の飼い犬でしかない。


遥香に向けた残虐な顔は今は隠れているようだけれど……


いつの間にか目的地に辿り着いていたらしく、一階の立ち入り禁止区域を奥へ奥へと歩いてきたことを考えると、ここは建物の端の端であることがわかる。


もしかしたら、B棟への入口にあたるのかもしれない。


「わかりました」


そう言って示された部屋に入ると、中には人が一人入れるくらいのカプセルのようなものが置かれていた。


< 216 / 406 >

この作品をシェア

pagetop