BirthControl―女達の戦い―
青柳が背を向けているこの瞬間に、久枝はこの部屋を見渡せるような位置に素早く小型カメラを取り付けた。


間一髪のところで青柳が振り返り、久枝にカプセルに入るよう手でどうぞと合図した。


久枝は何事もなかったようにカプセルに歩み寄っていく。


カプセルのへりに手をかけ中に入ると、そのままゆっくり横たわった。


その時、青柳とは反対側のカプセルの外に何気なく手を置くふりをして小型カメラを貼り付けるのを忘れなかった。


これでこのカプセルの運命も伝わることだろう。


あとはこの中で自分がどう殺されることになるのかを撮影できれば任務は完了だ。


幸い、青柳は何も気付いていない。


「では、蓋を閉めますので手を出さないで下さいね?」


いかにも優しげに安心させるようにそう言った青柳が、パネルを操作し始めた。


死んでいくものへのせめてもの弔いなのだろう。


だけどそのくらいで死んでいった者たちが浮かばれるとは思えない。


青柳の薄ら笑いに嫌悪感を覚えて、思わず眉間に皺が寄りそうになるのを何とか堪えた。


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