BirthControl―女達の戦い―
男の怯えている原因がそれだけじゃないことを、譲と夏木だけはすぐに察知した。


きっとあの部屋を見てしまったんだろう。


ということは同時にB棟の存在も知ってしまったに違いない。


夏木はすかさずその男がそれ以上、余計なことを話す前に背中を押しながら青柳の部屋に案内するよう促した。


まだここにいるスタッフたちに知られるわけにはいかない。


まだどうなるのかわからないのだから。


その男のことは夏木に任せて、譲は案内してきたスタッフに、一階を案内するよう命令した。


まるで視察だと言わんばかりに……


グルグルといろんな場所を案内されながら、譲は別のことを考えていた。


(……血のような後?)


誰のものなんだろうか?


状況から見ると青柳のものである可能性は高いが、いったい誰に?


ふと見ると一階の踊り場から廊下に繋がる場所にも、それらしき後が見えた。


譲は案内役の男に再び声をかける。


「おい、この先には何があるんだ?」


血のような後を指差しながら、それが続く先を訊ねる。


「大浴場になりますが……

これは……いったい……」


男はそれに気づくと怯えたように言葉を詰まらせた。


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