BirthControl―女達の戦い―
その時、女性の悲鳴のような声が響き渡った。


間違いなくそれは大浴場の方から聞こえてくる。


自分の周りに取り巻きのようにいたスタッフを置き去りにして、譲はその場から駆け出していた。


大浴場に辿り着き、中の脱衣場に入ってもなお、血のような後は点々と続いている。


先程の悲鳴の主であろう女性は血の後を見て腰を抜かしているようだった。


その女の脇を通りすぎると、譲はガラッとその先にある引き戸の曇りガラスを力一杯開け放した。


「――ウッ!」


目の前は血の海だった。


足元に転がる青柳らしき男は、すでに事切れているように見える。


コクンと喉を鳴らしながら、譲は血まみれの青柳の手に銃が握られているのに気付いた。


濡れた床に青柳の血が華の模様のように広がっている。


譲はその先の浴槽の傍に誰かを抱き抱えながら放心している女を見た。


「お……前っ!」


見たことのあるその顔が、どこで見たのかを思い出すまでに時間がかかった。


あの時は確か……


着物を着ていなかったか……?


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