BirthControl―女達の戦い―
徐々に鮮明になる記憶に、やはりあの時のコンパニオンであることを確信する。


(やはりスパイだったのか……)


譲は諦めにも似た溜め息を深く吐いた。


嫌な予感は得てして当たるものだ。


目の前の惨劇が、あの時の自分たちの迂闊さが招いたものだと思うと、稲田を恨まずにはいられない。


譲自身はいつも注意深く行動していたのだから。


その時、湯気で視界の悪いその奥の浴槽の中にも、人影が見えた気がした。


何人かいるのなら、迂闊に近付くわけにはいかない。


見覚えのある女が大事そうに抱えるのは仲間なんだろう。


青柳の銃で撃たれたのかもしれない。


こちらだけでなくあちらにも犠牲者が出たってことかと、譲はまだこの時は冷静だった。


まさかそれが自分の娘だとは夢にも思っていなかったのだから……


どう収拾すべきかあれこれ考えていると、ようやく追い付いたスタッフと夏木も顔を出した。


「これは……」


夏木も女に気付いたようだった。


首謀者があの女であることを知る。


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