BirthControl―女達の戦い―
それだけに目の前の女たちを責める気にはなれなかった。


危険を犯し仲間を失ってまで手に入れたかった自由も、死んで行く高齢者を助けたいという気持ちも今ではわからないではないからだ。


大臣でいた時はOldHomeは政策の一つでしかなく、高齢者を犠牲にしたことにも何の罪悪感も抱いていなかった。


けれど辞めなければならない立場になってみれば、人間の感情として当然だと思う。


譲は自分でも驚くほど肩の荷が降りたような、ホッとした気持ちになっていた。


大臣を辞任し、一人の父親に戻って遥香に会いに行きたいと心から思う。


後ろで青柳がスタッフの手によって運ばれていくのを感じながら、譲は小さく溜め息をつく。


あいつにはずっと無理を強いてきていた。


もっと早くこの政策が異常なんだと気づいていれば、彼を死なせることもなかったかもしれない。


ずっと自分の下で働いてくれていたことを思うと無念でならなかった。


夏木が青柳を運ぶよう指示を終えてこちらにやってくると、女の傍に膝まずいた。


それから抱かれている娘の脈を取り、こちらも無念そうに肩を落とした。


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