BirthControl―女達の戦い―
けれどそこには何も手がかりはなく、遥香は落胆しながらもその周辺を指でなぞっていった。


しばらくそうしていると、遥香は僅かに少しだけへこんだ場所があることに気付いた。


注意深く触らなければ分からないほどの、ほんの少しの窪み。


遥香は試しにポケットから偽造カードを取り出し、それを翳してみた。


ピピッと電子音が小さく響いて、目の前の壁が一瞬にしてなくなる。


実際は自動ドアのように横にずれただけなのだけれど、遥香には瞬時に廊下が現れたように見えたのだ。


ずっと続く一本道の廊下の先にはもうひとつ扉が存在していた。


あの中にいったい何があるというのだろう?


久枝は無事だろうか?


あの扉の中の青柳に気付かれないよう、細心の注意を払い、ソロソロと廊下を進む。


時々、持ってきたモップの柄がカツンと壁に当たり、そのたびにヒヤッとしたけれど。


そんなに長くない廊下はあっという間に突き当たりになり、目の前の扉を遥香は眺めた。


今、このドアを開けて、青柳に気付かれない可能性は限りなく低い。


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