BirthControl―女達の戦い―
目を閉じて遥香を思い出すように、沈丁花の香りを楽しんでいる。
久枝はOldHomeでそうだったように、ここに来てからも毎朝、中庭の花壇に足を運ぶのが日課になっていた。
あの時、冷凍されていたにも関わらず、早めの処置のおかげで命をとりとめたのは、遥香のおかげといっても過言ではない。
後遺症が残り、歩けなくなって車椅子生活になった今でも、久枝は一度も恨み言を言うことなくリハビリに励んでいた。
若い遥香が亡くなって、老い先短い自分たちが生き残ってしまったことに、悔いがないわけじゃない。
けれど、せっかく遥香にもらった命を無駄にする気もなかった。
自分たちは今、精一杯生きている。
「今日はこれから施設に行く予定なんだよ」
哲朗がそう声をかけると、久枝はニッと笑って頷いた。
「梨央ちゃんによろしく言っとくれ?」
「わかった、伝えておきます」
哲朗はそう言いながら、病院に戻るためゆっくりと歩き始める。
それからふと思いついて、後ろを振り返り久枝に声をかけた。
「まだ寒いから、久枝さんも早く戻ってくださいね?」
「はいはい」
久枝は適当に返事をしながら、まだその場に留まって花を眺めていた。
久枝はOldHomeでそうだったように、ここに来てからも毎朝、中庭の花壇に足を運ぶのが日課になっていた。
あの時、冷凍されていたにも関わらず、早めの処置のおかげで命をとりとめたのは、遥香のおかげといっても過言ではない。
後遺症が残り、歩けなくなって車椅子生活になった今でも、久枝は一度も恨み言を言うことなくリハビリに励んでいた。
若い遥香が亡くなって、老い先短い自分たちが生き残ってしまったことに、悔いがないわけじゃない。
けれど、せっかく遥香にもらった命を無駄にする気もなかった。
自分たちは今、精一杯生きている。
「今日はこれから施設に行く予定なんだよ」
哲朗がそう声をかけると、久枝はニッと笑って頷いた。
「梨央ちゃんによろしく言っとくれ?」
「わかった、伝えておきます」
哲朗はそう言いながら、病院に戻るためゆっくりと歩き始める。
それからふと思いついて、後ろを振り返り久枝に声をかけた。
「まだ寒いから、久枝さんも早く戻ってくださいね?」
「はいはい」
久枝は適当に返事をしながら、まだその場に留まって花を眺めていた。