BirthControl―女達の戦い―
彼女はなかなか許してはくれなかったけれど、それでもテキパキと久枝の処置を手伝ってくれたし、今に至るまで献身的に看護をしてくれた。


だからこそ、今はどこに行くにも彼女を同行させている。


OldHomeだったあの場所には、行き場をなくしたお年寄りや体の不自由な人たちが、無償で住めるよう取り計らわれた。


医師や看護士も在中し、本当の意味での高齢者たちの家となっている。


麻生は思った通り大臣の座を追われ失墜していたが、遥香の意思をついで夫婦揃って施設で働らくようになった。


家を手放しあそこに移り住んでまで……


遥香はあの庭に墓碑を建て、その下に眠っている。


あの施設を開放した立役者として祀られているのだ。


政府はこの事態を重く見て、麻生だけでなく元厚生労働大臣であり、現官房長官でもあった稲田にも責任を追求し、引責辞任をさせた。


もちろん当時の総理大臣もである。


変わって政権を担ったのは、この女性の人権を無視した政治をずっと批判し続けていた人物だった。


密かに女性からは支持を得ていたものの、OldHomeの実態がわかるまで、それは取り上げられることなく、それでも必死に訴えていたのだ。


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